| 南西アジア旅行記 管理人の、7ヶ月間のアジア一人旅 おもしろエピソード |
■ 第14話 かわりはじめた片田舎の町 南インドの片田舎、ハンピという町に降り立った。 ハンピはヒンズー教の聖地のひとつで、寺院とたくさんの遺跡があるが、最近になってゴアのようにヒッピー旅行者たちが長期滞在しはじめているとの噂を聞いていた。 まず町外れにある大きな岩の山に登って見た。 想像していたよりも随分小さな町だ。 周囲は広々とした平原が広がっていた。 川、椰子の林、畑、それ以外は全部黄土色の乾燥した巨大な岩の山。 静かで、そして暑かった。南京虫に噛まれた足が痒い! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 町のメインストリート(といっても1本しか道はないが・・)に行き、最初に見つけたジュース屋に入った。 早速ヒッピーどもがたくさんいるではないか。 青い目の西洋人、それも演劇の舞台から飛び出してきたような派手派手しい連中だけがわんさかいた。日本人は一人もいなかった。 座っていたら、チロム(ハシシ喫煙用の筒)がまわってきた。 いろいろ情報を得るために彼らと友達になろうと思い、思い切り吸っていたら、そのうちに猛烈に効きだした。かなり強い! 店にはインド人のおばさんが一人いて、ヒッピーたちの中に入って不自然なくらい同調して笑って見せたりしている。 いっしょにチロムを(ちょっとだけ)吸って見せたりしていたが、ヒッピーたちが帰ってしまって私一人だけになると、今度は私に向っていろいろ話しかけてきた。 といっても、彼女はほとんど英語を知らず、会話の大半はタミール語だが、ところどころに英語の単語が差し挟まっているため、何を言いたいのかは理解できた。 要は、時計やラジオを持っていないかいうことだった。 彼女は、さっきまでヒッピーたちと赤い粉を額につけあって笑っていた時とはガラリとかわって、真剣な顔で聞いてくる。 さっきまでの態度は、仮面を被った偽りの姿だということがミエミエだ。 それに、何とかして英語を覚えたいらしかった。 私なんかに、英語の単語をいろいろと聞いてくる。 英語を覚えて、ヒッピー相手に商売して一儲けしようとしていることもミエミエだ。 怪しい下心が、彼女の体全体から滲み出ている。 もういい・・・適当な頃合を見計らってその場を離れた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 通りを少し歩くと、「Cold Drink」と書かれた看板のある別の店があったので、そこに座ってみた。 店といっても、郵便局の入り口のところで、竹と椰子の葉でつくった屋根があるだけの、店というのも恥ずかしいほどのものだ。日本で言えば「小屋がけ」程度か。 売っているものといっては普通のビン入りのコカコーラ類だけで、客用の長イスはさっきの繁盛していた店のと同じだから、たぶん借りてきたのだろう。 一応ヒゲをピッとはやした若いまじめそうなおやじと、その子供らしき者がやっていたが、客は私一人だけだ。 コーラを頼んで飲んでいたら子供が寄って来て、 「ナイス?」、「グット?」 なんて聞いてくる。 「Yes Nice」なんて答えてやると、彼は喜んで父親に報告に行くのだった。 すぐに戻ってきて 「ワンモア、コーラ?」と聞く。 要らないと言うと、またしても「ナイス?」、「グット?」 たかが普通のビン入りコーラにナイスもグットもあったものか! 郵便局の入り口を借りて、借り物のイスがひとつあるだけの店。 木箱にはいったコカコーラ類だけが唯一の売りものの店。 覚えたてのわずかな英語で一所懸命商売している親父と息子。 なんだかあまりにも滑稽で笑えてしまう。 ヒッピーどもが入り込んできたために、こんな商売でも、今までよりはお金になるからはじめたんだろうが・・・ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ヒンズー教聖地のこの町には寺院があり、やってくるインド人たちは、金持ちも貧乏人も皆正装した巡礼者ばかりであるが、 今や、町にある遺跡の上には若い西洋人のヒッピーたちが居座って音楽をかけ、夜になると騒々しくパーティーをやらかす。 いやしくもインド人たちにとっては聖地であるこの地の遺跡の上で、「ボーン・シャンカール!」などと子供っぽい声をあげて騒いでいるこの破壊者たちを、 インド人たちは別に非難するわけでもなく、むしろ彼らの持っているラジオなどを見に行ったり音楽に聞き入ったりしている。 インド人たちは聖地を守ろうという気概がないのか、あるいは包容力が大きいのか、あるいはどうしようもない愚か者なのか? よく分からないが、この混沌としたインドには何事も飲み込んでしまう大きな包容力というものを感じてしまう。確かに日本とは違う。 巡礼に来た正装のインド人たちが、ヒッピーたちが遺跡の上でかき鳴らすラジオの音楽に聞きいっている姿は、なぜかとても明るくてユーモラスにさえ見えるのだった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 夜、ハシシでぼけた頭でホテルをさがし歩いていたら、英語、それも滅茶苦茶な発音の英語を話すインド人が寄って来て何かを話した。 どうも2ルピーでシャワーが浴びられるというような意味らしいが、意味不明で何度も聞き返し、それでもわからないという素振りをしたら、彼は、 「You Go! バーカ」と日本語で言い放った。 腹がたつとともに、無性に悲しくなった。 なぜか無性に悲しいのだ。 この晩、結局、遺跡の上で野宿した。 こんな町は早く離れよう・・・ (続く) |